主催・協賛・関連行事平成27年度優秀地域貢献賞候補者の選考結果について

 日本農作業学会優秀地域貢献賞選考委員会(米川智司委員長,石川文武委員,小林恭委員,田島淳委員,久保田浩史幹事)は,平成27年12月3日に選考会議を開催し,常任幹事会から推薦のあった候補者の業績について慎重に審議した.その結果,2業績(受賞者2名)に対して平成27年度日本農作業学会優秀地域貢献賞を授与することが最適であるとの結論に達した.受賞業績名・受賞者名(所属)・授賞理由は以下のとおりである.なお,授賞式および受賞講演会は,平成28年度春季大会で執り行われる.

1)
受賞業績名:北海道における省力・軽労化生産技術の開発と普及
受賞者名(所属):竹中 秀行(北海道立総合研究機構 農業研究本部)
授賞理由:竹中秀行氏は,北海道立農業試験場(現 北海道立総合研究機構 農業研究本部)の研究職員として,畑作や酪農施設等の広範な省力・軽労化生産技術の開発と普及活動を行ってきた.
 小豆の省力・軽労化生産技術として,北海道内の各種機関と共同で,霜害等に遭遇する危険度に応じ,適切に品種や栽培法を選択すれば,汎用コンバインやスレッシャによるピックアップ収穫や,豆用コンバインによるダイレクト収穫が可能となり,子実の品質も慣行のニオ積み・脱穀方式と遜色ないことを明らかにし,北海道内各地域に適合した小豆の機械収穫体系の確立に貢献された.また,大豆の省力・軽労化生産技術では,汚粒が発生しない収穫条件を茎と子実の水分関係で示し,北海道内転換畑作地帯におけるコンバイン利用方法の確立に貢献された.これらの成果は,北海道内の豆類機械収穫技術の利用指針となり,農機メーカーや農業改良普及センター等を通じて,生産者に普及している.特筆すべきは,平成20年度春季大会での2題の講演で発表された,省力化生産技術としてのバレイショのソイルコンディショニング栽培体系ある.この栽培体系を用いると,収穫に要する労働時間が約4割削減でき,全粒種芋利用時における栽培全期間に要する労働時間が,慣行栽培体系の約7割にまで省力化できることを実証した.加えて,塊茎の緑化率・変形率および収穫時の打撲が少なくなることや,国産ソイルコンディショナの機械利用経費が輸入機より低く見積もられること等も明らかにした.これらによって,北海道の基幹畑作物である加工用バレイショの省力化生産技術の普及につながった.
 その他,平成19年度秋季大会-シンポジウム「超省力畑作生産システムを目指して」の実行委員,平成24年度秋季大会-シンポジウム「自然エネルギーを1次産業に活用した地域振興」の実行委員長を歴任し,後者では基調講演「北海道農林業における自然エネルギー利活用戦略」を行う等,北海道における学会活動を積極的に牽引してきた.なお,評議員や企画委員としても学会に尽力されてきている.
 以上のように,竹中氏は省力・軽労化生産技術の開発と普及において,北海道農業に顕著な貢献をされており,日本農作業学会優秀地域貢献賞を授与するものである.

2)
受賞業績名:高齢者や障がい者の作業改善や組織運営に関する研究と情報発信
受賞者名(所属):豊原 憲子(大阪府立環境農林水産総合研究所
授賞理由:豊原憲子氏は,大阪府農林技術センター(現 大阪府立環境農林水産総合研究所)の研究職員として,花き,緑化,園芸福祉に携わってきた.
 とくに,大阪府の福祉行政の一環である農地を活用した園芸福祉の研究成果として,平成16年度春季大会において「高齢者の福祉的活動としての農作業実践における問題点」を発表し,平成18年度秋季大会のシンポジウムでは「農作業のバリアフリー・ユニバーサルデザイン化技術」の話題提供を行った.これらは,農作業分野における園芸福祉研究の草分けと言える.これらの成果として,大阪府では全国に先駆け,水耕栽培で特産の軟弱野菜を生産する特例子会社を設立し,障がい者雇用を促進した.後に,大阪府内の障がい者雇用の拡大を目的に,行政機関や企業グループで構成されるハートフルアグリアソシエーションの創設へと発展し,豊原氏はアドバイザーとして,技術・運営面での課題に対する事業継続支援活動も行っている.この間,「福祉のための農園芸活動 無理せずできる実践マニュアル」を出版し,大阪府立大学総合リハビリテーション学部作業療法学非常勤講師として講義を行う等,研究成果の普及に努めた.さらに,これらの研究成果を花き分野にも応用し,女性や高齢者が取り扱いしやすく,花も傷みにくい切り花用のバケットを開発し,特許を取得した.現在でも,農食研究事業「高齢者・障がい者など多様な主体の農業参入支援」において,国際生活機能分類(ICF)などを用い,農作業の分解と個々人の生活機能に合わせた再構築による作業改善について研究を進めている.
 その他,平成18年度秋季大会の実行委員として参画し,近畿地区の学会活動の活性化に寄与した.
 以上のように,高齢者や障がい者の作業改善や組織運営に関する研究と情報発信を行い,地域農業および学会の活性化に顕著な貢献をされており,日本農作業学会優秀地域貢献賞を授与するものである.

 

主催・協賛・関連行事「東日本大震災に関する緊急集会」開催報告

 平成23年7月16日,京都大学吉田キャンパスで開催された日本農作業学会春季大会において表記集会が開催された.集会は,中司敬副会長(九州大学農学部)および、小松崎庶務幹事(茨城大学)による司会進行ですすめられた.以下,集会の概要について報告する.

 開催にあたり,小松崎庶務幹事から,開催趣旨として,東日本大震災に対する農業部門での総合的な対応が求められており,今回の意見交換をもとに農作業学会の活動につなげていく必要があることが述べられた.また,中司副会長からは,今回の大震災に対する対応は,被災地の復旧・復興支援にあたっての農作業学会および会員の学術的取り組みに加えて,学会が広く果たすべき社会的貢献など,長期的視点をもって農作業学会は対応すべき点があり,今回の集会で意見交換いただきたいとの説明があった.

 まず,被災地の会員から口頭で現状報告をいただいた.星信幸会員(宮城県古川農試)からは,宮城県において津波による被害をうけた1万2千haの圃場では,今年作付できたのはその1割程度であり,多くの圃場ではガレキの撤去が進まず,復旧活動が長期化していることが報告された.津波により塩害を受けた圃場では,代かきによる除塩を行った圃場もあるが,複数回による代かきにより,田植え後酸欠状態になるイネも認められた.そのため,除塩と作物生産が両立する農作業技術についても検討が必要であることが指摘された.

 武田純一会員(岩手大学農学部)からは,岩手県の被災圃場については,ガレキの撤去が約半数ほど終了しているが,ガレキ撤去後の圃場にはガラス類などが残存するため,今後の農作業上留意しなければならない点があることが指摘された.また,地盤沈下などにより水田のパイプラインなどが破壊された圃場においては灌漑水が確保されず除塩ができないなど,災害が複合化しており,現場での対策においては総合的なアプローチが必要であることが述べられた.

 松尾健太郎会員(東北農研)からは,東北地域における野菜作の被災状況について報告された.とくに津波の被害により,園芸関係の試験場や農家圃場が被災しており,ガレキの撤去が進まず,再建の目処が立っていないところが多いことが報告された.園芸施設においては,津波による浸水がなかった施設においても停電によって断水が生じ栽培作物が枯死してしまった園芸施設があり,全自動をうたっていた施設では停電による対応が全くできなかったことが指摘された.また,東北における園芸生産について復興プロジェクトがいくつかはじまったことが紹介された.

 関矢博幸会員(東北農研)からは,東京電力福島原子力発電所からの放射能漏れ事故の影響を受けている地域の稲作,畜産農家の対応の様子が報告され,農業者が農業に対する希望がもてるような復興活動について,農作業学会に対する期待が述べられた.

 小林恭副会長(中央農研)からは,放射能の除染に関する研究の取り組み状況が報告され,汚染レベル別の対応研究が,物理的除染,化学的除染,および生物的な除染など多面的に取り組まれつつあることが報告された.また,表土はぎなどによる汚染土壌の取り扱いに関する対応についてはまだ検討中であることが報告された.

 長崎祐司会員(農研機構近中四農研)からは,東北随一の園芸産地が被災を受けて,東北の園芸生産団地の再開発に関する議論がでていることが報告された.また,これまで資材コストやランニングコストを抑えた施設園芸のあり方について農作業学会においても報告しており,これらの技術も復興計画に貢献できる可能性があることが報告された.また, これらのイノベーションには時間がかかるため,長期的な取り組みが必要であることが指摘された.

 最後に瀧川具弘会長(筑波大学)から,東日本大震災に対する復興活動はまだまだはじまったばかりであり,地域の動向など学会会員間で連携をとり,農作業学会としての貢献の在り方については長期的に取り組んでいく必要性があることが強調された.

  今回の緊急集会は当初の予定になかったプログラムではあるが,非常に多くの会員にご参加いただいた.また話題提供いただいた会員の方々には,被災地などいまだ緊急的,流動的な状況なかでご報告いただいた.東日本大震災に対する復興にはまだまだ時間が必要であるが,農作業学会が期待される事項も多いことが改めて確認された.話題提供をいただいた皆様, ご参加いただいた皆様に記して謝意を表する.

(文責 小松崎将一)

(農作業研究 第46巻第3号「報告」より)

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